プライシング/値決めで押さえるべきポイント
新しい商品をリリースする時、いくらで売れば良いのか見当もつかないケースがあります。できるだけ高く売りたいけど、売れなきゃ困る。安くすれば売れるかもしれないけど、実は安いことによって売れなかったり、売れたとしても利益が全然出なかったり。針の穴を通すようなドンピシャが美しいですが、なかなかの難易度です。
まずは価値を考える
値決めの一歩目は、価値の特定です。新しい商品は、誰が・どんな場面で・どのような価値を受けられるのでしょうか?
BtoB(法人向け商品)の場合は、価値はいずれか2つに集約されます。
◆売上の増加
◆利益の増加
間接的に貢献する価値でもOKですが、直接的であるほど顧客に価値を実感してもらいやすいことでしょう。
BtoC(個人むけ商品)の場合は、売上利益などの数値より実感・体感などプラスの感情が価値の源泉です。楽しい・美味しい・スッキリする・カッコイイ/カワイイ・嬉しい・気持ちいい・リラックスできる・楽ちん…などなど。そして、あなたの商品がない時とある時でどんな差が出るのか?それが価値を金額に換算するときのヒントです。
価値のうち、何割を頂けるか
BtoBの場合は具体的に貢献できそうな金額が見えてきます。BtoCの場合は間接的になりますが、それでもあった時とない時の差分が分かればイメージがつくはずです。
そして次は、その金額のうち、何割を自社の貢献分として頂くべきか?を考えます。とくにBtoBの場合は、増えた売上・利益の全部をこちらで享受させてもらったら発注する意味がないですよね?発注したことによって、顧客に残るお金が増える。そうでないと発注する意味がありません。9割頂けるのか?7割か、半分か、3割か?自社と顧客で利益をどう分け合うか(レベニューシェア)という問いに対して、見解を持ちましょう。そうすると、まずは価値ベースでのプライシングが想定できるはずです。
競合・代替品と調整
ここまでは純粋に顧客と自社に完結する話でしたが、次はマーケットを考えていきましょう。具体的には競合と代替品です。どちらも、それぞれが出している価値と価格を確認し、比較し、その上で自社商品の金額を調整するのです。これは、必ずしも先に価値ベースで出した金額より下げるという意味ではありません。自分たちが思っていた以上に顧客が高い金額を出してくれるという可能性もあります。(もちろん、下げるケースの方が多いです。)
競合の無い(と少なくとも自分たちは考える)商品をリリースする場合は、代替品との比較を忘れないようにしましょう。たとえば、ビジネス出張向けのすごい新商品を開発できたとして、移動手段や宿泊手段との比較検討は抜けもれなくされるかもしれません。ところが、代替品として忘れてはいけないのがWeb会議システムやメール・チャットです。「遠く離れた人とビジネス上のコミュニケーションを取る」という目的に立ち返ることで代替品もリストアップできます。
利益が出るかチェック
ここまででおおよそ、売値が見えてきたはずです。そしてこの段階でようやく、コストを確認します。設定した金額(売上)から想定のコストを引いて利益が出るか?利益率は十分か?チェックしましょう。この時点で赤字、想定する利益額・率に届かない場合は、売上・コストの再確認をしましょう。
コストを削減する際、「安かろう悪かろう」にならぬよう注意しましょう。これまでシミュレーションしたことが全部崩れる可能性もあります。紙の素材を1ランク下げる、実績あるデザイナーへの発注からクラウドソーシングに切り替えるなど。顧客は自分たちが思っている以上に「体験(ユーザー体験/UX/User eXperience)」を重視しています。
時間軸を伸ばした利益チェックする
利益のチェックは商品リリースした直後の確認でしたか?それとも一定期間経過後でしょうか?どこか分かりやすいポイントに絞って確認したことと思います。次はそこに時間軸を加えていきましょう。
リリース直後から黒字で、じゃんじゃん利益を稼げることはめったにありません。そのため、時間軸を伸ばして利益を確認する際は2つのポイントを見る必要があります。
◆単月黒字
◆通算黒字(赤字合計<黒字合計)
この2つが、現実的に自社のキャッシュで回せるか?チェックします。
どうやっても単月黒字にならない、通算黒字があまりにも先であるといった場合、そもそも商品のリリース自体を再検討する必要があるかもしれません。今の段階で数値に落とせる根拠は無かったけどやってみるという選択もアリですし、想いや最終的な価値は残したまま別のソリューションを提供するのも一つ。この段階で撤退を決めることも立派な意思決定だと思います。慎重に、でも迅速に、決めましょう。
検討順はなるべく崩さずに
価値→顧客とのシェア→競合・代替品→コスト。
この順番は、1円でも多く利益を出し、かつビジネスを永続させるための順番です。逆に考えれば考える程、利益が出ない構造になります。ただし敢えてあるとしたら、競合・代替品の価格より大きく下げられる自信がある場合。低価格をウリに、自社だけがコストを徹底的に切り詰められるならば、勝ち筋が見えてきます。ただし低価格戦略(コスト・リーダーシップ戦略)は市場のバランスが崩れた瞬間に崩壊するリスクもあるので、慎重にリスクを管理しましょう。